【受難の夜のはじまり】




「……これが、ちいさい方のお風呂なんですか………?!」


通された部屋を見て、あたしは思わず驚きの声を上げてしまった。



ユウキさんが『貝楼閣』と呼んだこのお屋敷は、外観も内装もまるで老舗の旅館のような風情だったけど。お風呂場も、まるで高級温泉旅館のような造りだったのだ。


床板がつやつやと光るほどにきれいに磨きこまれた脱衣所は、あたしの部屋の何倍もあろうかという広さ。

おおきな鏡が取り付けられた大理石調の洗面台はゆったりと作られていて、傍には湯上りに涼むための藤製の寝椅子まで用意してある。

部屋の正面奥、おおきな引き戸の向こうには「大浴場」と呼んでもいいくらいのおおきな檜風呂が見えた。家族旅行でだって、こんな豪華な温泉には行ったことがない。



「ここ、ほんとうにあたしが使ってもいいんですか……?」



あたしが聞くと、ユウキさんは着物の袖口を口元に押し当ててほほほと笑う。



「何を仰るかと思えば。……今日からあなたさまが主様の奥方になられるのですから、湯殿のことなぞどうぞご随意に。……湯浴みが終わりましたら後は閨(ねや)に向かうだけで本日の儀式は終わりとなります」

「ネヤ?」


あたしが尋ねると、ユウキさんは何かあたしを小馬鹿にするようにクスリと笑った。


「新手枕を交わす場所のことでございますよ」


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