【和合の儀】



「きゃあッ、ちょ、ちょっと皆礼くん……っ!?」


皆礼くんは布団の中に横たわる、あたしの体の上にゆっくりと被さってくる。


「黙っていろと言ったはずだ。……これより『和合の儀』を始める」


最前に悩ましい顔をしていたのが嘘のように、皆礼くんは表情の一切を消して冷淡な声で言い放つ。この状況を飲み込めないあたしは、そんな皆礼くんの態度が怖くて布団の中で体を縮こまらせる。

皆礼くんは右手を差し出し、布団越しの、ちょうどあたしのお腹があるあたりにその手をかざした。そしてその姿勢のまま目を閉じると、すっと息を鋭く吸って口を開いた。



『我が身は彼の遠つ海より来臨せし、遠海勢玉来蒼大竜主神に娶されしかさねの腹より顕現せり、此の地を竜主神の聖光たる通力に依りて、永きに守り、潤し、幸を導きせし神等の縁ありて、豊海と名付けたる山海を治めるもの、名は遠海勢玉来日高比古也』



皆礼くんは朗々とした声で、宮司さんが唱える祝詞のようなものを口にする。



『今宵情けの深き月は満ちに満ち、万物を生来せし海原には益々盛んに命巡りて、我が身に宿りし命胤の、海来玉には愈々力満ち竜主神の加護を得たり、我が手に依りて此の命を結ばんとす』



皆礼くんは深く集中するためなのか、目を閉じたまま唱え続ける。

すると不思議なことに、窓も空いてなくて風が吹き込むはずもないのに、だんたんと皆礼くんの黒い髪が風に煽られたかのようにふわりと持ち上がってくる。

そのあたたかいエネルギーのようなものは、まるで皆礼くんがかざしている右手から生まれてくるように下から上へと巡っていく。

そして皆礼くんの右手の下にある、布団の中のあたしの体までじわじわと温かくなってくる。


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