「絶対大学へ行きなさい。
高校の時はアンタの希望をきいたでしょう。
今度はお母さんの言う事をききなさい」


「同じことを」


母さんの懇願にも似た頼みを
けんもほろろに一蹴する。


「高専でもなく専門にも行かない。
いきなり就職って何処が雇ってくれる訳?
アンタが思うほど世間は甘くないのよ!」


「体一つあれば何とでも」


「朝輝っ!!」


「…………ヤレヤレ、分かったよ。
母さんがそこまでいうなら仕方ない」


「進学するのね?」


連日の母さんの説得が功を奏してか
ついには兄の方が折れる形となった。


母さんの安堵した表情を確認して
兄さんは穏やかに笑った。

「ああ、大学に行く。
ただし、それには二つ条件がある。
先ず俺はこの家を出て独立する」


それまで蚊帳の外で二人の会話を
聞いていた俺はドキリとした。

やっぱり兄さんは此処を出ていくんだ。


「一人暮らしするって事?」

「いや、二つ目の条件として
零一を連れていく」


「その子を?」


意外な提案に母さんは驚いて俺を見る。

その俺もいきなり名前のあがった事に
内心かなり驚いていていた。


「自慢じゃないが自炊は出来ないし、
俺が餓死しないようにコイツがいるんだよ
譲れない条件だ」

母さんはどう反応したら良いのか
分からない様子でただ兄の顔を見ていた。


「……体裁抜きに、
お袋だってそっちの方が良いだろ?」



「…………!」



結局その一言がダメ押しとなって
兄の大学行きと引越しの両方が決定した。


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