「母さん、少し寂しくなるかも
しれないけど、別に出て行ったきりに
なる訳じゃない。
場所も近いし月に何度かちゃんと
顔を見せにくるから」

「……朝輝」

俺は二人の邪魔にならないように
先に兄さんが友人から借りてきた
車に乗って事の成り行きをぼんやり
バックミラー越しに見ていた。


「母さんもこれで男を何時でも
連れ込めるだろ?」

「あ、朝輝!!
親をからかうなんて、バカっ!」

「あははは」

しんみりとした雰囲気から一転
怒鳴られて、もう早く行きなさいと
言わせたのは兄さんらしい別れ方。






「行くぞ、零一」

サイドミラーで小さくなっていく母に
どうしてだか申し訳ない気持ちになって
心の中で俺は謝る。

実際は俺がいようといまいと
兄は一人暮らしをしていたかもしれない。
直接ではないかもしれないけど
それでも、俺は母に対して罪悪感を
感じずにはいられなかった。



兄は引越し先に母さんの家からさほど
離れていない場所を選んだ。

母さんを意識しているって
アピールするのを忘れてないあたり
ソツがないだろと笑っていて。

俺の通う中学にも自転車で
充分な通学圏内で、
大学からは少し離れるけど
その分安く借りられたから
問題ないとも兄さんは言っていた。


本当に――

これは口にはしないと
分かってるけど……
あくまで、母さんと俺の事を
優先に考えた結果の立地。

自分の事はいつも二の次、三の次
何処までも兄さんらしい選択だ。

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