私を惚れさせて。私の虜になって。
こうやって。みんな
俊くんから宿題を聞いて、私はいつも通り自習室に向かう。

まーくん1人が、勉強していた。

いつもは、松木が開けるドアを、今日は私が開ける。

「松木は?」

「なんかねー、めっちゃ機嫌悪かった」

「舌打ちは?」

「舌打ちしかしてなかったぐらい」

笑えないけど。

「まじかー。どうしたんだろ」

「せいぜい、進路で親と揉めてんじゃないの?三者面談からじゃん。来なくなったの」

「だからってさー、俺らに当たらないでほしいよ」

「しょーがない。いつか、戻るっしょ」

家のことなんて、私たちには、何もできないんだから。

私が、一番知ってるから。

「そんなもんかなー」

「そんなもん」

愚痴を聞くぐらいしか、私たちにはできない。

愚痴を言いたがらないんだから、見守るしか、ないんじゃないの?

「んー」

まーくんはどうやら、気に入らないみたいだ。

「きになるんだったら、これ持って話しかけな、今度」

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