砂糖漬け紳士の食べ方

伊達はそれ以降、彼女の不節制を一つも責めなかった。

代わりに「女の子なんだから、体は大事にしなさい」と帰り際に言われるだけ。


「女の子なんだから」という、やもすれば男女差別に繋がるようなセリフも、彼の口から聞けばそれはひどく優しい響きに聞こえた。




「ではまた今度の取材日に」

「ああ、気をつけて帰りなさい」

「本当にご迷惑をおかけしました」



返事の代わりに、伊達は薄く笑って玄関ドアのノブへ手をかけた。



玄関ドアを閉める一瞬、アキは伊達を振り返る。


伊達の表情は少しも見えなかったが

それでも彼女は、体全身をゆるま湯にとっぷり浸かったような安堵を覚えていたのだった。


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