この恋、永遠に。
「おい、あれ、まだ高校生じゃないのか?」

「どう見ても大学生でしょ。お酒飲んでるし、さっきから話を聞いてるとどうやら大学のサークル仲間みたいだよ」

「お前…」

「何?」

「いや、何でもない」

 孝の観察力には呆れてしまう。確かに広いとは言えない店内だが、今まで俺と会話をしながら、あの学生グループの会話も盗み聞きしていたというのか。

 この柔和な表情を崩さない一見すると草食系タイプの色男が、実はやり手の経営コンサルタントだなんて、一体誰が見抜けるだろう。
 こいつの手の内で転がされて、気づけば全て失った人間を俺は何人も知っている。
 こいつだけは敵に回したくないものだ。

「どう?誰にするか決めた?」

 孝の中ではもう俺があの中の誰かをモノにすると決まっているらしい。
 相手の都合などお構いなしな所は俺と孝に共通する点だ。
 欲しいと思ったものは何があっても手に入れる。今までずっと、そうしてきたように。

「どう見ても高校生にしか見えないけどな」

「まだ言ってるの?どう見ても大学生だよ」

 俺はじっとその女を見つめた。
 俺たちの席から程近い、入り口付近に座るその女は自分から話し掛けることはなく、振られた話に笑顔で答え、ニコニコと愛想よく振舞っている。
 隣に座った男がたまに肩に腕を回したり、手を握ったりしているが、一瞬困惑した表情を浮かべるだけで、振り払ったりはしない。
 反対側に座る別の女がその男を窘めてやめさせるまで、男の言いなりだ。

 俺は何故かその、どう見ても高校生にしか見えない女に苛立ちを覚えた。自分の意思を自分で伝えられないなんて、幼すぎる。
 苛立つ感情そのままに暫くその女を見つめていると、不意にその女と目が合った。
 俺が眉根を寄せたまま、視線を逸らさずにいると、女は一瞬目を見開き驚いた表情をしたが、すぐに向こうから目を逸らした。

 初対面の女を不躾に見つめる自分のことは棚に上げ、俺は相手から目を逸らされたことに少し腹を立てる。
 だが、それは一瞬のことで、その女はまたチラリとこちらに視線を寄越した。

 気づかれていないとでも思っているのだろうか。何度も視線を寄越してくるところからして、こちらが気になっているのが丸分かりである。

「簡単だな」
 一言ボソッと呟いた俺は、湧き上がる苛立ちとともに立ち上がった。

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