この恋、永遠に。
 そんな部署に新人が配属されること自体が異例の人事で、私は瞬く間に有名になった。勿論、悪い意味で…。
 こんな事、彼女たちには勿論、他の誰にだって言えやしない。萌ちゃんがこんな私をそんな畏敬の念を持って見ていたと知れた以上、尚更だ。

 これは死ぬまで隠し通すしかない…。
 私は深い溜息を吐き、騒ぐ皆から視線を外した。そして次の瞬間、私の体は乾いたコンクリートのように固まった。
 そこには、私をジッと見つめる男がいた。

 漆黒のサラサラで清潔そうな髪は短く綺麗にカットされ、その奥には強い意志を持った力強い瞳。真っ直ぐ伸びた鼻梁から続く形のいい唇は、余計な言葉は何も発しない頑なさを顕している。
 私と視線が絡んだ瞬間も物怖じせず、ただ真っ直ぐに私を見ていた。見られていた私が悪いことをしたような気分になり、思わず視線を逸らしてしまう程に。
 もっとも、私には確かに後ろめたい思いがあった。

 私は彼を知っている。仕事で倉庫から荷物を出しているときに、会社のロビーでたまに彼を見かけた事があった。
 彼の名前は本宮柊二。私が勤める本宮商事の専務取締役だ。確か年齢は三十一歳。
 背が高く、男なのにうっとりするほどの容姿の持ち主で、それなのに浮ついた話がなく未だ独身だと、他の女子社員が話していたのを聞いた事がある。

 社長の息子で将来はこの会社を背負って立つ人間であるからこそ、玉の輿狙いの女子社員たちから熱烈なアピールを受けているらしい。
 そんな男が今、瞬きもせず、私を見ているのだ。まるでその視線に晒されて石になってしまったかのように、私は動けずにいた。

「美緒先輩、どうしたんです?」

 私の異変に気づいた晃くんが私の肩を抱いたまま、瞳を覗き込んでくる。

「な、何でもない」

 慌てて逸らした視線を少ししてこっそり本宮専務に向けると、彼はまだ私を見ていた。
 な、何?私、何かしたかな?

 バクバクと心臓が暴れ出す。全身の汗腺から汗が吹き出ているようだ。
 本宮専務と私に今まで接点はなかったけれど、雇用主と雇用者だ。全くない訳でもない。ましてや私は新人で資材部に配属されたイレギュラーな人間であるわけだし。

 もしかして、私たちの話が聞こえていた?
 嫌な予感が脳内をめまぐるしく駆け巡る。
 ここで、私の会社での立場をばらされたくはない。そんなことになったらもう二度とこの仲間に会うことが出来なくなってしまう。

 再びチラリと本宮専務に視線を投げると、丁度彼が立ち上がるところだった。
 真っ直ぐに私の方へやって来る。
 まずい、これはまずい。絶対に良くないことを言われてしまう。
 私は晃くんの腕を振り払うと、それまでの大人しい私からは想像も出来ないほど勢い良く立ち上がった。

「あ、あの…!」

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