この恋、永遠に。
第四章

狙われた私のお城

 まるで夢のような日々だ。大好きな彼と結ばれ、幸せの余韻に浸っているうちに、彼はさらに大きな歓びを私にくれた。
 私の胸元には、彼にもらったピンクダイヤモンドの指輪が光っている。彼は左手薬指にはめてくれたけれど、何しろ私には分不相応といえる指輪である。こうしてネックレスにして服で隠しておくことが精一杯だ。高級品に疎い私でも、この指輪が桁違いに高価であることはすぐに分かった。私の古いアパートにしまっておくにはあまりに怖い。

 私がこんな贅沢な指輪をはめることを躊躇っていると、彼は「美緒の白くて細い指にはこれが一番似合うと思ったんだ」と言って笑った。
 その後、彼の両親に紹介され、私はガチガチに緊張していたけれど、意外にも彼の両親は私と彼の婚約を祝福してくれた。彼の父親はこの会社の社長だから、私は特に構えていたのだけれど…。初めて間近でお会いした社長は、息子である柊二さんの婚約を手放しで喜び、私にくれぐれもよろしく、と頭を下げた。こんな何も持たない私でもいいのかと、気後れしていたのが嘘のようだった。

 それに、柊二さんのお兄様にもお会いした。あの夜見た女性が柊二さんのお兄様だったなんて、かなり驚いたけれど…、私たちの婚約で数年ぶりに実家に戻った玲二さんを、ご両親も温かく出迎えていた。この婚約が本宮家にとっていい方向へ動いたと、柊二さんは言っていた。そう言われると私も嬉しいし、安心する。みんなが幸せになれるのが一番いい。



 私は胸元のエンゲージリングを、制服越しに握り締めた。彼は今日から一週間、東南アジア諸国へ出張である。会えないのは寂しいけれど、この指輪が私の気持ちを簡単に押し上げてくれる。我ながら単純だと自分でも笑ってしまうけれど。

 郵便物の入った青いプラスチックケースを台車に積むと、私はエレベーターに乗り三階のボタンを押した。今日も営業部から順番に回って行く。
 軽やかな音とともにエレベーターが三階に到着し、まだ重い台車をエレベーターの外に運び出していると、ふいにそれが軽くなった。見上げると高科さんが笑顔で台車を引っ張ってくれている。

「高科さん!ありがとうございます」

 にこりと微笑んでお礼を言った。

「どういたしまして。今日は元気だね。何かいい事でもあった?」

 どうやら高科さんは休憩しようとしていたらしい。小銭入れを手に握っている。

「はい、ちょっと……えへへ」

 漏れ出る幸せを抑え切れなくて私は満面の笑顔を見せる。すると彼は困ったように眉尻を下げると微笑んだ。

「そっか……」

 彼には私が柊二さんとお付き合いしていることを話していた。以前、会社で柊二さんとばったり出くわしたときに、柊二さんが私の名前を呼んでいたことを追求されたからだ。もっとも、高科さんからのアプローチを断るためにも、彼には私たちの関係を話すことで柊二さんと合意していたのだけれど。柊二さんは相変わらず公表したいと言っていたが、それを止めたのは私だ。やっぱりどうしても資材部の私が柊二さんとお付き合いしていることを公表するのはまだ躊躇われる。

 高科さんには婚約の話はまだしていなかったけれど、私のこの笑顔が柊二さんに関係していることだと、彼は気づいたのだろう。そしてそのまま休憩に誘われた。
 久しぶりに高科さんと一緒に三階のリフレッシュコーナーへと寄る。私は前と同じ、ミルクティーをもらった。
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