この恋、永遠に。

ホワイトクリスマス

 柊二さんのマンションに引っ越して二週間が過ぎた。ここでの生活にもだいぶ慣れてきた。彼は相変わらず優しくて、もともと少し過保護なところがあるけれど、あの事件以降、それに拍車がかかったようだ。

 今週、渋る柊二さんを何とか会社へ見送った。ずっと私の傍についていてくれたけど、彼の立場で長期間オフィスを不在にすることが良くないことくらいは、私にも分かる。
 彼はくれぐれも一人で外出しないように、と言い残して会社へ向かった。必要なものがあったらコンシェルジュに言えば対応してくれるらしい。もちろん何かあればすぐに携帯に連絡するようにとも言われた。
 家を出るときの心配そうに瞳を揺らした柊二さんを思い出す。彼はいつも自信に溢れていて、私と出会ったときも鋭い眼光を放っていたけれど、最近の柊二さんはいつも不安そうだ。彼にあんな顔をさせたいわけじゃないのに。

 早く元気にならなくては、と焦るけど、なかなか思い通りにいかない。
 私はまだ仕事復帰できていない。柊二さんも沢口さんも、有給休暇扱いになっているから気にするなというけれど、私は入社してまだ一年も経たない新人だ。そんなに有給があるはずはない。傷病休暇だとしても、新人の、しかもリストラ候補の資材部の人間がこんなに長い間休んで何も言われないのは、やっぱり柊二さんのおかげなんだと思う。

 とても申し訳ないと思うのに、私はまだ仕事を出来そうになかった。体は何ともないはずなのに、ストレスなのか、それとも感情の起伏によるのか、分からないけれど、すぐに熱が出てしまう。その度に柊二さんに心配をかけてしまって、そんな自分が嫌になる。彼に幸せを感じて欲しいのに、今の私は彼に迷惑をかけるばかりで何も出来ない…。そんなの、嫌なのに…。

 ふいにリビングで私のスマホが鳴った。柊二さんかもしれない。私は慌ててテーブルの上に置きっぱなしになっていたスマホを取った。…知らない番号だ。

「……はい」

 通話ボタンを押し、恐る恐る電話に出る。

「渡辺様の携帯でよろしかったですか?」

 元気な女性の声が聞こえてきた。

「はい、そうですが……」

 誰だろう?私は首を捻る。

「私、以前、フォトフレームの修理をご依頼いただいたものですが………」

「あ……」

「お急ぎということでしたので、何とか二十四日には間に合うように手配させて頂きました。ですが、出来上がりのお時間が二十四日の十七時以降になってしまうのですが……よろしかったでしょうか?」
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