もう一度、あなたと…
Act.3 誓ってみたら…
控え室に一人きりにされて15分後くらいに、「たからがひかる」が戻って来た。
式の方はなんとか、1時間ほど遅らせてもらえるようになったらしい。

「でも、それ以上は無理だって。披露宴の都合もあるし。…エリカはどうだ?…何か思い出したか?」

側に来て跪く。こんな美男子にそんな態度を取られるようなことが、ホントに起こってるんだろうか…。

「まだ…やっぱり何も思い出せない…」

32才の私としてなら、出会った日の彼のことは思い出した。
でも、26才の私としての今は、さっぱり実感が掴めない。
「たからがひかる」と初めて出会ったのは、私が26才の時で、彼は当時、大学卒業したばかりの22才だった筈だから。

(だから、この同い年…っていう設定も謎なのよ。…どうして同い年になんかなるのよ…⁉︎ )

不都合さが夢だと物語ってる。だったら、今すぐにでも醒めて欲しい。


「……何してるんだ⁉︎ 」

頭を押さえつけるようにする行動を不思議がられた。

「刺激を与えたら、目が覚めるかと思って…」

ポカポカ…と頭を叩いてみる。その手を押さえつけられた。

「やめろ!何バカな事してんだ!」

言い方が優しい。太一とは…やっぱり違う…。

「記憶なんか混乱したままでもいいから。俺と式挙げよう?エリカはそれを、ずっと楽しみにしてたじゃないか…」

優しい顔してる。何も覚えてない私に、不安はないの…?

「…そんなに…楽しみにしてたの?私…」

聞き返す。今の私も32才の私と同じように、式を挙げたがってた…?

「してたよ。カレンダーに花マルまでつけて」

クスクス笑う。「たからがひかる」のこの笑顔を、今まできっと何度も見てきた筈だろうに…。


「…どうかした?」

顔を近づける。ハッとなって我に返った。

「ううん…別に!」

胸の鼓動を隠すように顔を背ける。
今、私は、彼の笑顔がとてもステキだと、本能的に思ってしまった。
これが現実だか夢だか曖昧で謎でも、それだけは何故か変わらないもののように感じた。

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