俺様社長と秘密の契約

触れられるのに、心は遠い

会場に入った俺たち。
…いつも以上に綺麗な理子に見惚れていた。

そんな時、オレの目に映ったのは、胸元に光る指輪。
オレが無理やり理子にあげた婚約指輪だ。

本当は、左薬指にはめていてもらいたいが、まだそうするわけにはいかなかった。
まずは、理子が、神宮寺善一郎の孫であると言う事を、世間に知らせなければならない。

…今すぐにでも、結婚し、婚姻届を出したい。
龍吾に、理子を奪われる前に。


「龍介、遅かったな」
少しご立腹の神宮寺社長。

・・・コイツは、自分の想い通りに、オレを動かしているつもりなんだろうが、全く逆だった。

オレが、コイツを思い通りに動かしているにすぎない。
…すべては、理子を、自分のモノにしていきたい、その一心で。

「…すみません、理子の準備に少し時間がかかりまして」
そう言って、理子を神宮寺社長の前へ。

…一瞬驚いた神宮寺社長。
だがすぐに、納得したように頷いた。


「まるで別人だな…流石は、神宮寺の血を引く身だ。
これくらい綺麗になれば、世間に出しても恥ずかしくはないだろう」

「・・・」
神宮寺社長の言葉に、怪訝な顔をした理子。

理子は、本当に神宮寺社長が嫌いなようだ。

…理子の顔から、みるみる笑顔は消えて行く。
愛らしい笑顔が消えるのを、見ているのがこんなにも辛いのか。

そう思うと、やりきれない気持ちになった。


…間もなくして、神宮寺社長がステージに上がり、今日のパーテイーの趣旨を説明し始めた。
< 113 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop