今度こそ、練愛
いろいろと考えを巡らせながらの帰り道。
ショッピングモールへ買物に寄ろうと通りを歩いていた。
大通り沿いの歩道で舗装工事をしていているから、歩きにくくて道を一筋逸れることに。ごみごみとしていて、人とすれ違う時に気を遣うのが嫌だったから。
一筋入った通りは大通りよりも交通量が少なくて歩きやすい。
今まで気づかなかった店を眺めつつ歩いていると、古びた雑居ビルの一階に小さな喫茶。
昔ながらの雰囲気を醸し出している店の入り口には、イーゼルに掲げられたメニューボードがある。
この喫茶店のお勧めメニューでも書いてあるのかな?
歩く速度を落として、メニューボードへと目を向ける。
『人材派遣、各種代行業……』
見た瞬間、胸に絡まっていたもやもやの糸が解けてく。
考える間もなく、自然と足が進み出す。
その会社は喫茶店の二階に事務所を構えていた。
薄暗い階段を上がるとすぐに擦りガラスの扉。中は見えないけれど、ちゃんとメニューボードに書いてあった会社名が書いてある。
「失礼します……」
扉を開けた先は思ったよりも明るくて、がらんとした小さな部屋。無駄な飾り気のない部屋の奥、窓際のデスクに座っていた男性が私に気づいて立ち上がった。