鬼部長と偽装恋愛はじめました
「本城、今日は素直だったな。手伝おうか?」

「あ、田中さん……。それは、申し訳ないので」

デスクに戻るとすぐ、田中さんに声をかけられる。

「いや、本城が実際にプレゼンをするわけじゃないんだから、作るのが難しくて当然だよ」

今日は真由が有休のため、隣が空いている。

田中さんは真由のイスに座ると、私の方へ寄せてきた。

「本当にいいんですか? ありがとうございます」

田中さんだって忙しいのに、私の仕事を手伝ってもらうのは気がひける。

だけど彼は、苦笑いをして首を横に振った。

「いや、実はさ、アポが一件延期になって、困ってたところなんだ」

「そうだったんですか? 大変でしたね」

そういう訳なら、素直に甘えようか。

この企画書の提出期限も、迫ってることだし。

「じゃあお願いします。田中さんのご都合のいい時間までで構いませんので」

「ハハ。あと一時間くらいは大丈夫だから。仕上げてしまおう。早く部長に提出した方がいい」
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