白雪姫の願いごと

◇東宮寺私立探偵事務所





愛理の住んでいる『東宮寺探偵事務所』は、大学から電車で30分の場所にある。



「た、ただいまー……」



私は事務所の扉を開けると、恐る恐る顔を出した。


そんな私の鼻先を、焼けた肉のいい匂いが掠めていく。


……ん?肉?



「ちょっ、マサ君んんんんんん!?」



驚いた私は一気に扉を開け放つと、ドタドタと部屋の中に入った。


慌ててキッチンの方へ向かえば、いつも通りの真っ黒な服の上から赤いエプロン――いつも私が使っているゆるキャラのついたやつ――を着たイケメン同居人ことマサ君がこちらを向いた。


その手元には、じゅうじゅうと美味しそうな音を立てる豚肉が。



「ちょ、マサ君、これっ……!」


「――慌ててるのは分かったから手を洗え。最近インフルエンザ流行ってるらしいから」


「あ、うん……じゃなくて!これ、もしかして冷蔵庫に入ってた最後のお肉とかないよね!?」


「……?そうだけど。何か問題が?」


「…………」



それを聞いた瞬間、私は思いっきり頭を抱えた。


なんてこった……。


恐らくマサ君は私がお肉のセールに行けなかった事なんて知らないから、残りの古いお肉を消費しようとこうして調理してくれてるんだろう。


だけど、だけどねマサ君……!



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