差し込む光できらきらと光る天井のステンドグラス。

 幻想的で美しい光の柱の下には、地面に倒れ、少しずつ体が薄れてゆく一人の女性。
 

 誰もが理解していた、もう無理だと………。
 彼女は力を使い過ぎたのだ。
 命を繋ぐのに必要な僅かな力もたった一人の男の為に使い切ってしまった。


 行かなければと彼は思った。
 彼女の側に。

 そう頭では命じていても、体は鉛を背負ったように動かない。

 側には彼女の死を悟り呆然と涙する一角獣の姿。


 どれだけの時が経っただろうか………。

 一分……十分……一時間………?


 静まり返ったその静寂を壊す声が響いた。


 駆け込んできた一人の男は、今にも消えそうな女性に近付き何かを叫んでいる。

 泣き叫び、必死で彼女を捕まえようと手を伸ばしているが、彼女をつかむ事は出来ず手は空虚をつかむようにすり抜ける。



 そうしている間も、彼女の体はどんどん消えていく。


 さらに涙する男を、彼の中に誰のせいだと罵りたい気持ちが溢れるが、体も口も動かない。


 最後の力で男と何か言葉を交わす彼女を、現実味を帯びないどこか別の世界の事のように見つめる。



 その時、ふいに女性の視線が彼に向けられた。

 視線が合わさった一瞬、何か言葉を紡ごうと彼女が口を開いたが、それは音にはならず、彼女の体は跡形もなく消えていった。


 一体彼女が何を残そうとしたのか、もう知る事はない。

 もう彼女はいない………。

 優しい笑顔を向けられる事も、名を呼んでもらう事も………。


 唐突に理解してしまった彼は、声なき声を上げる。

 血を吹き出しそうな叫びを上げた所で、情景は暗転する。


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