あなたの優しさが…

外へ出ると、いつか見た黒塗りフルスモの車が停まっていた。

乗るの?これに?と戸惑いながら彼に後に続いた。



『飯食ったか』


私の腰に手を回しながら聞かれた。

夜はいつも食べないと伝えると
一瞬眉間にしわをよせ運転手さんに
どこかへ指示をした。


「あの…雅樹様?」

頭がついてかず、聞きたいことがあった。


『雅樹だ』


「雅樹様…何故へ行」


『雅樹だ…』


話の途中で、強い口調で割って入る言葉。
少しビクついた。


『悪りぃ』


『飯行く。その時話す』



それ以上、私は聞けず
黙って窓の外に目を向けた。
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