年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
明日香ちゃんはどこか冷めている子で、そういう噂話に積極的に参加したりはしないくせに、情報だけはいち早く掴んでいる。

社員同士の無駄話を、聞いていないフリをして実は一番しっかり聞いているのは明日香ちゃんだ。

「だからって、私に当たるのってすごい理不尽じゃない?」

「絵里が理不尽の塊だってことはもうとっくの間に知ってますよね、沙羽先輩なら。

……それに、ちょっと疑ってるんじゃないですか? 木下さんが昨日すっぽかしたのは、沙羽先輩のせいなんじゃ、って」

ぎょっとして明日香ちゃんを振り返る。
あの強引なキス、もしかして誰かに見られてた?


「なんでっ?」


慌てた私を、明日香ちゃんが上から下まで見渡してから、意味ありげな目を向けてくる。


「先輩、昨日と同じ服。

……一体どこに、誰と泊まったんですか?」


ああそういうことね、とほっとしながら、これは面倒な誤解をもたれたな、と少し嫌になった。

「家の鍵をデスクに置いてっちゃっただけだよ。友達の家に泊めてもらいました」

嘘は言ってない。なんで置いてったのかは話せないけど。
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