年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

「はい?」


立ち去りかけた体をまたこちらに向けて、私から出てくる言葉を待っている。
彼はきっと、私が待ってと言い続ける限り、いつまでも待ってくれるんだろう。


「ちょっと寄ってく? コーヒーくらいなら出せるよ」


いつも送ってもらうけど、家に誘うのは初めてだった。積極的に深い意味をこめるつもりはないけど、どう取ってもらっても構わない、とも思った。


もういい加減、答えを出さなきゃ。

考えて考えて、一番強く思ったことは、大輔くんに名前を呼んでもらえなくなるのは嫌だ、ってことだった。ごちゃごちゃ考えてわかんなくなるくらいなら、自分の気持ちに素直に従ってみよう、と思った。


私は、大輔くんが好き。それだけは確実だから。


大輔くんが束の間、戸惑う素振りを見せる。それでも私が黙ってじっと見つめると、彼もその目を見返してきて、お互いの視線が一瞬絡まった気がした。


「……じゃあ。お言葉に甘えて」


多分、言葉の裏に潜ませた考えは伝わったんだと思う。頷く彼の表情には、柔らかさの他に少しだけ、熱っぽさが含まれているような気がした。
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