……こんなふうに可愛く涙を浮かべることができたなら、こうやって好きな男を睨みつけたりしなくてもよかったんだろうな。


「どっちから誘ったかなんて興味ないけど、言い訳なら聞いてあげるよ」

「……可愛げのない女だよな」

驚いて気まずげな表情を浮かべていたはずなのに、祥裄が徐々に苛立ちを見せ始める。

あんたにイライラする権利なんかないっつの、と心の中で呟きながら、ああもう終わりだな、とどこか冷静に考える自分がいた。


「こういう時ってさ、もっと感情的になるもんじゃないの? お前、なんでそんなに冷静なんだよ?」

「感情的になったってあんたと絵里ちゃんがキスしてた事実は変わらないでしょ? なに、私に泣いたり責めたりして欲しかったわけ?」

「本当に俺のこと好きならそうするはずだとは思うよ。……お前、俺のことなんかどうでもいいんだろ?」


そんなわけあるか。

どうでもいい男と三年も付き合ったり、その男のために腰まで髪を伸ばしてみたり、そろそろ結婚かな、なんて密かに情報誌を買ってみたりするはずない。

私がいつでも冷静さを捨てきれないことなんて、一緒に過ごした三年の間でとっくにわかってくれていると思ってた。

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