「お前は一人でも大丈夫だもんな。男なんていなくても十分人生楽しいだろ?」

「そうね。少なくとも自分の彼女の後輩に堂々と手を出す男はいらないわ」


ここで少しでも涙を流すことができたら、この男の気持ちも何か変わるのだろうか。そんなことない、私にはあなたが必要だと、瞳を潤ませてしがみつけば。


「お前ってそういうやつだよな。……絵里、行こう」


祥裄は私を軽く睨んで、小さく震える絵里ちゃんの肩を抱き寄せて私の横をすり抜けて行った。
すれ違う瞬間、絵里ちゃんがすっと私の顔に視線を投げて、一瞬だけ口元に笑みを浮かべていたことに、きっと祥裄は一生気付かないんだろう。

悔しいのか悲しいのか、それとも怒っているのか。

自分の感情もよくわからないまま、一人になった途端に溢れてきそうな涙を押し止めようと必死で唇を噛んだ。

浮気された上に、その浮気相手とともに恋人が去っていった後に取り残された女の涙なんて、惨めなことこの上ない。しかもここは会社なんだから。しっかりしなきゃ、このあとは大事な打ち合わせだ。


ぐ、と一度まぶたを閉じて、溢れそうになった涙を引っ込める。大きく息を吸って、全て呼吸とともに吐き出した。


よし、大丈夫。


そうやってあっけなく、私の三年をかけた恋は、終りを告げた。


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