年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
時間より少し早目についてしまって、店に入っていっていいものか少し迷う。
カットモデルなんて初めてで、そもそも営業時間後の美容室になんて来ることはまずない。この前は黒川くんが招き入れてくれたし。

このノーブルヘアーという美容室は、今年の夏にできたばかりのようだった。
名刺をもらってから調べたけど、クーポン誌とかフリーペーパーには載っていなくて、ネットで検索したらかろうじてホームページが出てきただけだった。あんまり積極的に集客に力を入れているような感じではなくて、メニューの価格を見たら相場より高め。客層を絞って、隠れ家的な雰囲気にしたいのかもしれない。
黒川くんのイメージとはミスマッチな気がしたけれど、こういう店に来る有閑マダムたちには、逆に彼のあの癒される雰囲気は喜ばれるのかもしれない。息子のように可愛がられてそうだ。

しばらく店を見上げてから、時計を見る。

八時四十五分。
……まあ、早すぎたら座って待ってればいいか。

よし、と意を決して、二階へ続く階段を上る。
そろりとドアを開けて中を覗くと、フロントで何か作業をしていた人が顔をあげた。
 
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