資料室から大量の生地見本を抱えて出てくると、ちょうど私を探していたらしい平山(ひらやま)さんに出くわした。

「お、いたいた片桐、探してたんだ。山田邸の内装プラン、もうできてる?」

「できてますよ。最終的なプレゼンはまだですけど、見ます?」

「ちょっと見せて」

平山さんはコーディネート部門のチーフだ。
入社当初の私を育ててくれた、頼れる先輩。職場では厳しいのに、プライベートでは三児のパパで、奥さんの尻に敷かれていると噂だ。
私の腕からひょいっと生地見本を半分取り上げて、持ってくれる。

「最近頑張ってんじゃん。木下くんと別れたって聞いて少し心配だったけど、どうやら取越し苦労だな」

平山さんは私と祥裄の出会ったころから付き合う経緯まで、ほとんど知っている。一緒に飲んだ時に、三十で結婚したいな、なんていう私の勝手な期待まで話していたものだから、私たちが別れたと聞いて、何かと心配してくれた。


「男と別れてずっと落ち込んでいられるほど、可愛い性格してないんで。もう吹っ切れました」

「その髪は木下くんなんていらないぞ、っていう意思表示なんだろ」

「そうです。もうあいつとは関係ないです、ってアピールですから」

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