私がずっと髪を伸ばしているのは祥裄のためだということを、社内のみんなが知っていた。私は全く覚えていないけれど、酔った勢いで飲み会の時に自分で言っていたらしい。

だから短くなった私の髪は、独り者になった私が立ち直ろうと頑張っている証のように見えたようだ。髪を切ってから会った人は、みんなほんのりと励ましの目を向けてくれた。
大きなお世話だ、と思いつつ、まああながち間違ってもいないので、向けられる優しさはありがたく受け取っておいた。


デスクに見本をどさっと置いて、引き出しからプランを取り出して渡すと、平山さんがペラペラとその場で目を通す。


「このお客さん、結構手ごわいだろ」

「難しいけどやりがいはありますよ。それだけこだわってくれてるってことだし」


山田さんはお得意様からの紹介で依頼していただいたお客様だけど、とてもこだわりの強いご夫婦だった。
色の微妙な違いまで気にされるからそれに合わせていくのが一苦労だけど、その分気にいるものを提案できるととても喜んでくれるから、やりがいはある。


「片桐らしいプランニングだな。でもちゃんと要望は叶えてる」

サンキュ、とすぐに返された。
あれ、ただ見たかっただけ?

少し戸惑うと、平山さんがにや、と笑った。

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