年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
私が無言で曖昧に首を振ると、大輔くんは少し落ち込んだように目を伏せた。

話したくない、と言うより、話したら困らせてしまう、という思いが強いのだけど。


「言いたくないなら聞きませんけど。

……無理したら、ダメですよ?」


しゅんとしながら、それでも私を気遣ってくれる。
また見つめてくる目が、一途に飼い主を見上げる子犬みたいだった。

ありがと、と笑ってみせると、大輔くんの表情もようやく緩む。そのまましばらく、黙ってコーヒーを啜る私を見守っていた。



「髪」


大輔くんが沈黙を破った。


「伸びましたね」


す、と手が伸びる。

小さくぴくりと震えた私の反応には気付いたのか気付かなかったのか、そのまま彼の指が私の髪を掬った。

愛おしげなその仕草に、祥裄に感じたような怒りはまったく感じなかった。
それどころか、もっともっと触って欲しい、指を通して髪を梳いて、上から下まで撫でて欲しい、と強欲に思う。


「また、カットモデル、お願いしてもいいですか?」

「もちろん。まだ全然ショートにたどり着いてないし」

「やっぱりショートにまでします?」

「します。そういう約束でしょ?」


もったいないんだけどなあ、と髪を掬ったまま苦笑いしてから、言った。
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