薔薇の夢をあなたに
7章 旅立ち
次の日の朝。私たちは懐かしい荷馬車に乗り込んだ。







いつもと違うのは、馬車をひく馬の中に美しい銀色の馬が加わったこと。
そして、一人の魔法使いがメンバーに加わったことだけ。









「レイ様…どうか御無事で。」
「留守は任せたよ。」
今まで気付かなかったけど、かなりの数の小人族が城に仕えていたようで、総出でレイの見送りに来ていた。









「ジュリエット様…。お元気で…」
「エリー…、さびしくなるわ…」
私は、お世話になった大切な小人にお別れを告げていた。








「ジュリエット様ならきっとどんな困難も乗り越えられます。ずっと応援しております。」
エリーは大粒の涙をこぼしながら話す。







「ああ、エリー。この恩は一生忘れないわ…大好きよ…」
ぎゅっと抱きしめる。するとエリーがそっと耳打ちする。
「…レイ様とどうかお幸せになってくださいね。」







「エリー!?」エリーはぱちっとウインクすると私の背中を押した。
「さぁ、皆様お待ちですよ!いってらっしゃいませ!!」









私は満面の笑みで返した。「いってきます!!」
荷馬車に飛び乗って、小人族に手を振る。
あっという間に城は見えなくなった。












「怖い?」レイがそっと声をかけてきた。
「ううん、怖くないわ!みんながいるもの。



むしろワクワクするくらい!どんなことがこれから起こるのかなって?」









「ははは、君はもっとお姫様らしく、おしとやかになれないのかな。」











レイは朗らかに笑う。
「これからが本番だ。僕も全力を尽くす。







だけどね、君が隣にいると、
僕も楽しくてたまらないんだ。」








きれいな歯をみせて笑うレイ。
風を浴びてきらめく髪はいつまで見てても飽きないくらい。











「ちょっと。二人だけの世界に行かないでくださる?ワタクシもいるんですのよ!」
レイの肩からひょっこり、ルビーが顔を出す。










「もう!ルビー!たまには二人にしてよ!」私たちは顔を見合わせて笑った。











大丈夫。きっとうまくいく。
馬車のなつかしい揺れを体に感じながら、私はレイの肩に頭を寄せた。

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