薔薇の夢をあなたに
8章 森の中の出会い
とうとう日が沈んだ。
「信じれらない…何なんだ…この森は!」
私たちは延々と森の中を進んでいた。










もうかれこれ6時間近くは進んでいる。
しかし、まったく周りの風景が変わらないのだ。









水源を探して進んでいるはずなのに、私たちは似たような景色の中をずっとさまよっていた。











普通森のなかと言っても、勾配が変わったり、光の差し込み具合が変わったりと、進んでいれば風景はどんどん変わるはずだ。
なのに、この森は全くそれがない。












「くそっ!」デイヴィスの顔に焦りが現れる。
「団長!馬車を止めてください!!」ロゼットの鋭い声が飛ぶ。














二台の馬車はギイーッと止まる。
「あれを見てください。」ロゼットが一本の木を指差す。
そこには魔法の刻印が残っていた。













「あれは1時間ほど前に、私が通り過ぎた木に残したものです。それに、あそこにも…」
目をこらすと、先の木にも似たような刻印がされている…















「なんてこった!!俺たちは同じところをぐるぐる回ってたのか!?」
ロゼットがうなずく。















「気が付くのが遅くなってしまい、申し訳ありません。どうやら、この森には強い幻術がしかけてあるようです。」
「どうしたら突破できる!?」
「やってみないとわかりませんが、おそらく光魔法で払えるはずです。」















ロゼットは荷馬車からヒラリと飛び降りると、杖を取り出した。
「悪しき霧を討ち払い、我らの前に正しき道を示せ。」
詠唱が終わると同時に、あたりにあたたかい光が満ちる。












「あっ!あそこ!!」
なんと、さっきまではまったく見当たらなかった川が遠くに流れているのが見える。













「やったぞ!ロゼット!!」ロゼットさんが馬車に飛び乗ると、私たちはその川に向かって直進した。
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