その日、店内を忙しそうに駆け回る比奈守君とはほとんど話せなかったけど、私は琉生や純菜と楽しい時間を過ごした。焼肉も美味しかった。


 帰り際、レジで会計を済ませようとした私達の元に比奈守君のご両親と比奈守君がやってきて、お金はいらないと言った。

「先日息子を送って頂いたお礼なので、ここは……」
「すみません。それでは、お言葉に甘えて。ありがとうございました。とても美味しかったです。また来させて下さい」

 そう挨拶する琉生に続き、純菜と私も感謝の言葉をご両親に伝える。すると、比奈守君のお母さんが私の方を見た。

「いつも息子がお世話になっております。あなたは夕の担任の先生でいらっしゃるんですよね?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。夕君の担任をさせていただいています、大城飛星と申します」
「大城先生……。息子から話は聞いています」

 聞いてるって、何を!?

 告白されたことやラインのやり取りの件が頭を巡り動揺してしまったが、お母さんが言いたいのはそういうことではなかったらしい。

「大城先生は生徒想いの優しい先生だと。学校行事でも、先生のおかげで皆が楽しめたのだと聞きました」
「そんな、恐縮です。まだまだ至らぬところばかりで……」

 思わぬ好評価に戸惑っていると、比奈守君が困ったようにお母さんの発言を止めた。

「その話はもういいじゃん。これ以上引き止めたら先生達に悪いって」
「もう、ちょっとくらいいいじゃないの。ほんと、せっかちな子で……」

 お母さんは言い、元から柔らかい顔をさらに柔らかくして言った。

「受験もありますし、三年生の先生方も大変かと思いますが、うちの息子のことも、一年間よろしくお願いします」

 改まって頭を下げられ、私はあわてた。

「お母様、どうか頭を上げて下さい。精一杯努めさせて頂きますので、こちらこそよろしくお願い致します」

 それまで穏やかな顔で私達の方を見ていた比奈守君のお父さんが、からかうような口調で比奈守君を小突いた。

「えらい可愛い先生だなぁ。夕、変な気起こすんじゃねぇぞ?」

 思わぬことを言われ、顔が赤くなってしまう。可愛い先生、か。やっぱり、未熟さが雰囲気に出ちゃってるのかなぁ……。教師オーラ皆無?

 どう反応したらいいのか分からない私に、比奈守君は一瞬だけ視線をよこす。

「父さん、先生の前でそういう冗談やめてくれる?すいません、先生。父さん、だれかれ構わず軽口叩くんで、スルーでいいですよ」

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