魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 ふわふわとしたいい気持ちなのに、誰かに乱暴に肩をつかまれ、肩を激しく揺すぶられた。

「目を覚ませ、起きろ!」

 直後に耳元で怒鳴り声がする。

 やぁよ、寝てるんだから、放っておいて……。

 顔を背けた直後、また声が聞こえてくる。

「おい、しっかりしろ! セリ、起きろってば!」

 私の名前が呼ばれてる……?

「むにゃ……」

 つぶやくような声を漏らしたとたん、パシンと音がして頬に鋭い痛みが走る。

「痛っ」

 一瞬にして目が覚めた。

「正気に戻ったか」

 目の前には、ホッとしたような表情の勇飛くんの顔。

 ひゃー、こんなにドアップで。しかも、私、彼に抱き起こされている!?

 きゃー、どうしよう。

 そう思った瞬間、頭を持ち上げてくれていた彼の腕が離れ、後頭部から地面に落ちた。ゴンと鈍い音がして、星が飛んでいるみたいに目の前がチカチカする。

「ひどい……」

 痛む後頭部をさすりながら起き上がって驚いた。目の前の光景が信じられず、瞬きを繰り返す。

「大丈夫か? 正気に戻るにはもう一発ビンタが必要か?」
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