魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 勇飛くんが皮の袋に入れて持っている地図を頼りに、私たちはしばらく川沿いを歩き、草と低木が途切れたところで、馬車道に上がった。

「山賊たちの言ってたコランダム村っていうのが、私たちの村なの?」

 少し前を歩く勇飛くんに問いかけると、彼がチラリと振り返って答える。

「そう。このレッドベリル王国最大の村で、付近の小さな村々から一目置かれている。ケンカやもめ事なんかの困ったことがあったりすると、みんなコランダム村の長老を頼ってくるんだ」

「長老?」
「うん。名前はアンダルサイトって言って、かなりおじいさんらしい。俺たち剣士のスポンサーだとかいう話で……」

 勇飛くんの話を遮るように、後ろからガラガラと大きな車輪の音が近づいてきた。振り返って見ると、一頭立ての幌つき馬車がゆっくりと走ってくる。手綱を握っているのは、私のおじいちゃんくらいの年齢の御者で、手綱を引いて私たちの横に停車した。

「剣士様、ユウヒ様。ご無事でなによりです。村までお乗りくだせえ」

 御者の言葉に、私は勇飛くんと目を合わせた。正確な時間はわからないけど、もう二時間くらいはずっと歩きっぱなしなんじゃないかな。
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