魔恋奇譚~憧れカレと一緒に王国を救うため、魔法使いになりました
 男性が言う。

「年配の者には昔からの考え方に縛られて魔法使いを低く見る者も多いですが、実際に魔法の恩恵にあずかった者は少なくないのです。ただ、地位の高い人間が魔法使いから攻撃を受けるはずなどないと安心するために、制度として魔法使いは低い身分に置かれているんです」
「本当に変な制度だな」
「なくなればいいのに」

 勇飛くんと私が同時に言った。

「長老様が代替わりすれば、考え方も新しくなるかもしれませんね」

 男性が言った。

「とにかく状況を把握するためにも、現場を見に行こう。セリは俺から離れるな」

 勇飛くんが私の手をしっかりと握ってくれた。怖いけれど、一人じゃない。大好きな人がいてくれる。

 私はうなずくと、彼の手をギュッと握った。

「行きましょう」

 男性に続いて、私たちは早足で歩き出した。 
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