睡恋─彩國演武─

〔壱〕君を抱く聲



〔壱〕君を抱く聲



どれだけ歩いただろうか。

朱陽を出てから、ずっと歩き通しで足が重い。

横にいる呉羽は、もとが虎だからなのか、息ひとつ乱さずに軽快に歩いている。


「呉羽は疲れないの?」

「……この程度なら平気ですよ。虎ですから」

笑顔で答えられ、千霧はやっぱり、と項垂れる。

人間の体力を、虎と比べるなんて間違っていた。


「もしかして疲れたんですか?」


呉羽にとっては、千霧を気遣っての言葉だったのだが。

それは逆に、負けず嫌いな千霧に意地を張らせる結果となった。


「疲れてなんかない。このくらいで音を上げていては、彩國中を巡るなんて無理だもの」

きっぱりと言い切り、足の痛みを我慢して進む。

呉羽は苦笑してその後を追った。
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