空のギター

僕らの明日

 雪那が帰ってくる前日の昼下がり。頼星達はレッスンの休憩中だった。普段一緒に居る雪那の姿がないことは寂しかったが、仕事中には意識を切り替えるよう努めているらしく、つまらないミスをすることもない。プロの自覚が出てきた、ということだろう。

 四人が水分補給をしたりタオルで汗を拭ったりしていた時。光夜が小声を発し、三人の“何だ?”という風な視線が彼に集まる。



「なぁ、みんな。さっきスタッフさん達が話してるの聞いたんだけどさ……『unrequited love;』のプロモに出てる女の子、分かる?」



 光夜が言うそれはストーリー仕立てになっており、主人公の少女がQuintetの事務所の先輩、タレントの新堂藍(しんどう らん)が演じる少年に恋をするという話だ。歌の世界を表す映像なので、ラストは勿論少女の失恋で終わる。Quintetの五人が一切出演していないというのも、視聴者の興味をそそる要素の一つだった。



「あぁ、あの子ね。スタッフさん達の間では“謎の美少女”って言われてるらしいよ。」



 紘がニコニコして言うと、風巳も「そういえば藍さんもそんなこと言ってたなぁ……」と付け加える。実際どうなのかは謎なのだが。
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