空のギター
 光夜・風巳・紘の三人は、驚いて「はぁっ!?」と声を上げる。頼星だけが「いや……こいつならやるね」と言ってニヤリと笑う。硝子は驚いた顔をしたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。



「なかなか面白いことを言う子ね。デビュー曲のデモテープはもう出来てるんだけど……良いわ、交渉してみる。
せっかく夢を掴んだんだもの。自分がやりたいことやらなきゃ損よね!」



 その余裕ぶりは、彼女が懐(ふところ)の広い人間なのだということを見せつけていた。「ほんとですか!?」と叫ぶ雪那の目が、途端にキラリと輝く。



「ただし通らない可能性が高いわよ。曲は普通、何ヵ月も前から試行錯誤を繰り返されたものを使うんだから。」

「はい!ダメなら次の機会で良いです!!」



 雪那は笑顔で頷いた。純粋に、曲を書けるという嬉しさが心をいっぱいにしていたのだろう。



「じゃあ、完成したら私に持ってきてね。
……という訳であんた達。改めて、デビュー決定おめでとう!」

「ありがとうございまーす!!」



 硝子の言葉に、五人は嬉しそうに笑い合う。その笑顔は何よりも眩しい光だった。

 ──彼らの夢が動き出すまで、あともう少し。
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