空のギター
 織春が所属しているのは“ライジング”という事務所だ。個性溢れる歌手達を集め、その年齢層はとても幅が広い。最年少は織春だが、最年長は50代だとも80代だとも言われている。



「……織春ちゃん、ライバル意識を持つのは良いことよ?でも、冷静になって。織春ちゃんに人気があるのと同じように、あの子達にも人気があるのはどうしてかしら?」



 好美は織春を刺激しないように優しく諭そうとする。それも一方的にではなく、相手に気付かせる形を取っている。だが、まだ13歳の織春は、好美が意図することに気付けなかったのだ。



「私、もっと頑張ります!櫻井さんも応援して下さいね!!」

「え、ええ……」



 櫻井は小さく苦笑いを浮かべる。自分の言いたいことが伝わらなくて悲しくなったようだ。

 織春は“自分の努力が足りないのだ”と思ってしまった。努力を怠れば、たちまち時代の流れに取り残されて消えてしまうのが芸能界。それを恐れた織春は、今まで以上にレッスンに打ち込んでいくと決めたのだ。

 ──そして、数日後のある日。遂に“Sounds Good!”の収録日がやってきた。
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