空のギター

懐かしさと「初めまして」

「光夜ー!部活行こうぜ!!」

「オッケー!ちょっと待っててな。」



 合格が決まってから上京していた光夜は友達もでき、楽しい生活を送っていた。大学進学に向けて頑張っているらしい。



「光夜って前の学校でも弓道部だったんだろ?大会と仕事重なったりして大変じゃなかったか?」

「そこの所はウチのマネージャーが調整してくれてるよ。」

「へぇー、凄いな。この学校でもファンが集まってきて大変だろうし、何かあったらいつでも言えよ。」

「……うん、ありがとう!」



 光夜は嬉しそうに笑って言う。その笑顔は、QuintetのKouyaと何ら変わりなかった。

 ──真剣な表情で的を射抜こうとしている光夜。弓道場の外は、彼を一目見ようと集まってきた女子の群れで溢れ返っている。部長である生徒が「光夜に気が散るから」と女子達をシッシッと追い払う。不服な顔を見せながらも、彼女らは渋々離れていった。

 光夜の意識が再び的に集中する。空気を切り裂く音がした刹那。細長い矢は、見事的の中心を射ていた。途端にオォーッと歓声が上がる。光夜は照れ臭そうに頭をかき、誉めてくれる部員達に礼を返した。
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