腹黒王子の取扱説明書
1、完璧すぎるのも罪 ー 麗奈side
「今年の新人、どう?」

親友の杏子が食後のコーヒーを優雅に飲みながら、まだパスタを食べている私に目を向ける。

「う~ん、男の子は素直そうで使えそうだけど、女の子はキャピキャピしてて来年まで持つか心配」

「総務課も大変ね。数ヵ月前に、女の子一人辞めたでしょう?」

杏子の言葉に私は苦笑した。

私達は今、社食でランチを食べている。

私の親友の長谷部杏子は、大手電気機器メーカーハセベの総務部秘書課に所属している。

社長令嬢だけど気さくで、私の同期で新人研修の時に仲良くなった。美人で背も百六十五あって、髪は毛先をカールさせたフェミニンなミディアムカット。小柄な私と違って手足がすごく長くて羨ましい。涼しげな目元は社長譲りだろうか。

私は中山麗奈。綺麗な名前なのに、顔の作りは目も鼻も口も小さくて自分で言うのも悲しいけど杏子みたいな美人ではない。

唯一自慢できるのは、一度も染めたことのないダークブラウンの長い髪。生粋の日本人だけど、私は瞳の色も茶色だし、色素が薄いらしい。五つ下の弟には「後ろ姿だけなら美人なのにね。振り返っちゃだめだよ」と、よくからかわれる。
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