俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜

小さい嘘と大きな嘘

「柴田さんのお宅ですか?」

「はい。」

「あ、寺岡ですが、琴乃さんはいますか?」

「……今、ちょっと居ないみたいで…」

「ああ、そうですか。それじゃあ…」

「嘘です。」

「え?」

「慶太くんでしょ?あたしだよ。」

「なんだよ、も〜!」

「どうしたの?」

「この前、帰っちゃったから、あれは何だったのかと思って。」

「あ〜、だよね。近くにいたから寄ったの。ほら、送別会で皆と会って、なんか懐かしくなっちゃって。」

「生霊かと思ったよ。」

「ヒドイなぁ。」

「…夏、また来て下さいよ。」

「…んー。」

「この間、久しぶりに怒られて、ビシッとしたって言うか…」

「ごめんね。怒るつもりは無かったんだけど…」

「俺、後輩にはガンガン言いまくってんのに、ホント、琴乃ちゃんの言う通りっすよね。」

「よく、今まで誰にも言われなかったねぇ。」

「水泳に関しては、タメも新顧問も、俺に遠慮してくれてるから…つい。」

「良くないねぇ。」

「調子にノッてました。…俺、水泳で誉められたの、初めてだったから…クラブ時代は兄貴と比べられっぱなしで、なのに、ここではモテはやされて…」

「…」

「はじめは嬉しくて頑張ってたけど…」

「なるほどね。」

「兄貴から、聞いてません?」

「え!…うううん、何も。」
< 46 / 238 >

この作品をシェア

pagetop