食人姫
ふと、麻里絵はもう寝てるかななんて考えていた俺は、初歩的な事を見落としていた事に気付いた。


あの化け物は何なのか、どうすれば化け物を鎮める事が出来るのか、確かにそれは重要だ。


だけど、儀式の内容を知らないのでは手の打ちようがない。


それに気付くのが遅過ぎた。


「間違いねぇな。なんでもっと早くそれに気付かなかったんだよ。もうこんな時間だぜ」


哲也に言われなくても分かってる。


外には化け物がいて、自由に出歩けない。


今から麻里絵の所に行っても、もう寝ているかもしれないのだ。


「仕方ないよ、化け物をなんとかしようと必死だったからね。気付くのが遅れたのは、僕達も同じでしょ?」


でもどうする?


朝になったらすぐに麻里絵の家に向かうか?


いや、それじゃあ考える時間がなくなる。


儀式をせずに化け物を鎮める方法を。


そんな事が本当に可能なのかは分からないけど、儀式の内容を聞いてみないと分からない。


過去に、この谷の人間がそれを試みようとしたかもしれない。


それで失敗したからずっと儀式が続いているのかもしれないけど、だからと言って何もせずに諦めたくはなかった。
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