セルシオから降りると、冬の北風が俺を冷たく吹き抜けたけど、寒さなんて全く感じない。そんなどころじゃない。
震える手で親父のクレジットカードから三十万引き出し、封筒に詰め込み、パーカーのポケットに入れた。いざとなれば、これを渡して逃げればいい。

 そう、ついに来た。真純と暮らし始めて半年。ついに、恐怖の瞬間がやってきた。
金曜の夜に、携帯にかかってきた、知らない番号からの電話。それは……杉本からだった。

 待ち合わせの公園につくと、杉本は、ベンチでタバコを吸っていた。半年ぶりに見た杉本は、さらにパワーアップしていて、格闘家と言ってもおかしくない仕上がりになっていた。

「久しぶりやな、佐倉」
「お、おう」
怖い……めっちゃ怖い。
俺はパーカーの中の三十万を握りしめた。
「単刀直入に聞く。お前、真純んこと、本気なんか」
本気……本気かどうか……そんなことわかんねえよ。でもここで本気じゃないとか言ったら、殺されるかもしれないしな……
「本気だよ。決まってんじゃん」
杉本は俯いて、深いため息をついた。
「そうか……本気なんじゃ……」
どうしよう。俺、お前ほど、真純のこと、好きじゃねえかも……
「あ、あのさ、杉本……」
俺は言いかけて、言葉を飲んだ。純粋な、いかつい筋肉男は、さめざめと泣いている。くだらない、ナンパ男の前で泣いている。

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