情熱のメロディ

(4)

 一体、何が違うというのだろう。

 幼い頃からバイオリンを弾いてきた。つらい練習も我慢した。求められるものがだんだんと大きくなって嫌なこともあったけれど、それでもバイオリンは好きで捨てられない。

 コンクールで優勝をして、みんなが褒めてくれたあの頃……フリーダは確かに1番だった。それが――

 「あんな子に……っ」

 フリーダは苦々しく呟いて城への道を早足で歩いた。

 アリア・シュレマーは簡単にフリーダを追い抜いてしまった。技術も表現力も、まさに天から授かったかのようなバイオリニスト。アリアとコンクールで競う度に縮まっていく自分との技術差に焦っていた。いつか、アリアはフリーダの前を行くだろうと思っていた。でもそれが……こんなに早くだなんて。

 数年前、彼女に一体何が起こったというのだろう。

 アリアは突然羽ばたいた。恐れていた彼女の成長は、技術面だけでなく、表現力も一段と磨きがかかり、その優勝は誰も文句のないものだった。

 それ以来、フリーダはいつも2番手だ。どんなに足掻いても、アリアには届かない。自分が受けていたすべての注目と賞賛がアリアへと移っていくのを、ただ見ていることしかできなかった。

 今までもてはやしていた大人たちは手のひらを返したようにフリーダを哀れみの目で見る。
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