異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



とりあえず帝都へ向かうことになり、この集落で2、3日滞在して疲れを癒してから出発するって聞いた。

あたしは何度も巫女じゃないって主張したけど、セリス皇子はニコニコしながらもまったく聞き入れてくれない。物腰は柔らかそうだけど、案外頑固者みたいで厄介だ。


それよりも……と、あたしは思い出すだけで腹が立つ出来事にむかむかしてくる。


「あ~っ、もう! ムカつくったら」


あの顔を思い出すだけで腹が立ってきた。そういえば、台所でお湯を沸かしてるって聞いた。ちょっとくらい分けてもらって、体でも拭いてさっぱりしよう。


(ここに来て一回もお風呂に入ってないもんね。いい加減綺麗にしたいし)


まだまだ色恋沙汰に縁がないとしても、年頃の女の子として不潔は我慢ならない。いそいそと台所に行き、ちょうど居合わせたレヤーの通訳で桶一杯ぶんのお湯を分けてもらえた。


乾燥したこの土地ではかなり貴重だろうから、使ったお湯は掃除にでも使おう。そう決めて、誰も入れないようレヤーに部屋に結界を張ってもらった後、タオルをお湯で浸し体を拭く。


「は~やっぱり気持ちいいや。出来たらお湯に浸かりたいけど……」


髪も洗えないかな? と思いながらタオルを広げた瞬間。


「おい、メシだってよ――」


ノックもなくあの男がドアを開き、瞬間的に全てがフリーズした。



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