異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第21関門~その、花の薫りは。



パーティーが行われている水晶宮殿の客間の一室で、あたしはあり得ないシチュエーションに遭遇してる。ベッドの上で、バルドが覆い被さってきてるなんて。


あり得ないし、あっちゃいけない。


「ちょっ……バルド、待って!」


あお向けにベッドに倒れてるあたしの両手は、バルドの手によってベッドに押し付けられてる。動かそうとしても、びくともしない。彼にどれだけの力があるのか――。


いくら普段から努力し鍛えていたとしても、こんな時に男女の力の差をまざまざと見せつけられる。


彼を蹴ろうと足を上げたのが解ったのか、バルドは自分の足でその動きを封じ込める。これで完全に全身が彼に捕らわれた。


「バルド……やめてって! なんで、こんなことするの? 意味がわかんないよ」

「契約するからに決まっている」


あたしの叫びに、バルドは簡潔かつ迷いなく答えた。


「なんで? あたしは、望んでない。バルドだって……望まないでしょう? あなたにはアイカさんがいるじゃない。
愛してもない女とこんな……」


全てを口にできなくて、頬が熱くなり顔を逸らした。


ヒスイが言ってた巫女と契約する方法。巫女が力を発揮する、唯一かつ一番の手段。


それを望むということは、バルドは巫女の力が欲しいの?


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