異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第23関門~最後の夜には。



セイレスティア王国の迎賓館での訪れがあって以来、ほぼ1週間が過ぎたけど。アイカさんと会う機会はなかった。


ただ、彼女の評判は男女で極端に差がある。男性は“美しく淑やかで慎ましく、思いやり溢れている淑女” と概ね好意を感じさせるものに対し、女性は“既婚者もターゲットにする男好きの悪女。したたかであざとくて嫌い”という反感を持つもの。


アイカさんの悪口を言う女性に、男性が反論してケンカになったり。男性が幻滅して別れを切り出す、なんて話まで聞いた。

男女の仲が拗れるのはよくある話だし、何がきっかけであれ別れるかは本人達の意思によるものなら仕方ない。


だけど、それが恋人という仲ならともかく。夫婦……しかも20年連れ添った公爵夫妻というなら、話は別。


セイレム王国貴族の結婚は国王陛下の許可も必要だし、国一番の大聖堂で国王陛下夫妻ご臨席のもとで永遠の愛を誓ったはず。 それが、なぜ。5人もの子どもを持ちながら貞淑で完璧な優しいと評判の妻を離縁しようとするのか。


ヒスイから訊いたその理由は
《妻が、アイカを見て“あの方は好きになれそうにありませんわ”と2人きりのプライベートな部屋で呟いただけ、だそうじゃ》というものだった。


《アイカという女もなかなかしたたかじゃな。同じような例はこれで5組目じゃ》


夜、訓練を終えた後でヒスイが漏らした何気ないひと言は、あたしにショックを与えるには十分だった。


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