「なんなのよ……アイツ」


ぶつぶつ言いながら部屋に戻る。触れたものはすべすべしていて、ちょっと柔らかい。似た感触によく触った記憶はある。



(まさか……だよね)


それでも記憶にある通りのものだとしたら、ぞんざいに扱う訳にはいかない。あたしはタオルをベッドの上に置き、ソッと手のひらを載せて指を開く。


予想通りに、何かの卵が手のひらの中にはあった。


薄茶色くてまだら模様がある卵は、時折動いているようにも見える。まさか、もうすぐ孵化するの!?


(えっ……ちょ、いきなり孵化直前の卵を渡されても。どうしろって言うのよ~!)


あたふたしながら、とりあえず暖めないとってタオルでくるんで服の中に入れた。そして、同じ鳥ならばとレヤーを訊ねてみれば、彼はいろいろと事細かく教えてくれる。


「でも、これってたぶん野鳥の卵ですよね? それなのに、ここまで育てるのは並大抵の意思じゃ出来ませんよ」


もう少しで孵化するから、たぶんあたしが肌身離さずに暖めればいいってアドバイスされたけど。それ、どんだけ大変かわかってませんよね?


でも、とレヤーは卵を返してくれながらとんでもないことを言い放った。


「もしかすると、和さんの気持ちが解れるとか慰めるためにと考えて、プレゼントされたのかもしれませんね」

「は、あいつが? ナイナイ、絶対ないって!」


レヤーの言葉に噴き出したあたしが卵を落とさなかっただけでも奇跡だ。


だけど……。


“めったにいない貴重な品種の鳥だ”と、レヤーが話した時に。まさかという思いで胸がざわついた。


まさか……まさか。


(ううん、ない。絶対にない! あいつがあたしを慰めようだなんて思うはずがないもの)


頭を振りながら否定しても……

どうしてか照れくさそうなあいつの顔が、頭のなかに浮かんだまま離れなかった。


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