さよならさえ、嘘だというのなら



眠れない。

今日は色々ありすぎた。

俺と須田凪子の自転車2人乗りはアッという間に広がってる。

田舎町の連絡網の早さを知る。
怖っ!

明日は学校で
どんだけ冷やかされるだろう。

そんな事を思うとまた目が冴える。

夜中の12時から本棚にあるワンピースを読み始め、23巻を手に取ると枕元でスマホが光る。

こんな時間に誰だろう。

未読メールが一件

須田凪子からだった。

帰り際に勇気を出して『LINEやってるよね?』って聞きながらスマホを取り出すと

『LINEはやってないけど……』少し照れながら彼女は自分の携帯を出す。

昔ながらのガラケー。
しかもかなり古い。

『登録していい?』

『うん。まかせる』

俺が操作するのを近くでジッと見つめる凪子。
その息遣いまで聞こえそうで
また心臓がドキドキしてしまう。

『はい』
そっけなく渡すと、凪子は嬉しそうにそれを手で包む。

『家族以外の人が初めて登録された』

『マジそれ?』

今世紀最大の驚き。

『携帯嫌いなの。持ち歩きたくもないくらい……だけど、今は持っててよかったって思った』
嬉しそうに笑う凪子の笑顔が愛しかった。

漫画の本を乱暴に置き
なぜかベッドの上で正座してメールを開くと

【また自転車乗せてね】

件名もなく
ただその一文だった。

絵文字もデコメも何もなく
ただ文字だけの
シンプルな一行。

【いいよ】

こっちも三文字の返事をし
俺はそのまま安心してベッドに沈み込み目を閉じる。

ずっと
メールを待っていたかもしれない。














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