神様の悪戯

修学旅行


六月二十七日
学校指定の集合場所にも無事、時間通りに辿り着いた。さあ、京都までバスでのんびり向かおう。













「咲弥(さくや)、飴ちゃん食べる?」

「…貰おうかな…もう、酔い始めてるし」


バスの隣の席は、仲の良い凜(りん)だ。
凜は柔道部に所属していて、とても強い。だけど、今みたいに飴のことを飴ちゃんと言ったり、お洒落が好きだったりと女の子らしい一面も多い。
いつもはおろしているセミロングの綺麗な黒髪も、今日は右耳の下で纏めていて、よく似合っている。

私の学校では、修学旅行は私服で過ごすことになっている。改めて、凜の私服姿を見るとやっぱりお洒落さんだと思った。


私は、普グリーンのTシャツに七分丈の茶色いパンツをはいて、セミロングの黒髪も耳くらいの高さで一つにまとめている。もう少しお洒落していけば良かったかな、と少し後悔。




バスの外を眺めながら、昨日の夜のことを思い出した。


桜の木下で微笑み合い、キスをかわしていた若い男女。とても幸せそうに見えた。


「いいな…」

ポツリと呟く。
凜はそれが聞こえていたようで直ぐに、

「何がー?」と質問をしてきた。

私は少し考えて、「彼氏が欲しいなと思っただけ」とありきたりな答えをいった。


凜は目を輝かせて、

「咲弥!この修学旅行で彼氏を作っちゃおうよ!あたしも欲しいしさ!」

「………パス」

えーと口を尖らせる凜に少し笑って、またバスの外の景色に目を戻した。



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主人公:河合 咲弥(かわいさくや)
都内の公立高校に通う2年
クラスメイト:橋口 凜(はしぐち りん)
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