ハロー、マイファーストレディ!
Ⅴ、復讐か報復か

■ 初めて芽生えた何か


これ以上ないくらいの成果に、俺は密かにほくそ笑んでいた。
人生、その気になれば大概のことはそれなりにうまくいくようになっているが、時の運というものもある。
天が味方をしなけれぱ成し得ないことも、この世には多いのだ。


「期待以上だな。」

コーヒーカップを片手に、議員宿舎のリビングのテーブルに広げられた週刊誌の記事に目を通す。
隣では透がノートパソコンでネット上の記事をチェックしていた。

「ああ、思った以上の反響だ。しかも、みんなあの手この手で大絶賛。真依子ちゃん、天才かもな。」

優秀な秘書が手放しで誉め称えるくらいに、各誌がこぞって真依子のプライベートショットを掲載している。

そのほとんどが、仕事帰りの真依子をとらえたもので、隠し撮りらしき写真の中でも、彼女のすらりとした身体とちらりと覗く顔の美しさは、俺でさえ思わず目を見張るほどだった。
その美貌とあわせて、話題になっているのは彼女のファッションだ。
唯一の趣味がショッピングというだけあって、真依子はお洒落に関しては研究熱心で、それなりにセンスもあるらしい。
特に高級なブランド品を身につけているわけではない。
ただ、流行を意識しつつ、自分に合った、好きなものを着る。
そのスタンスが受けたのか、中には彼女の特集を組むファッション誌まであった。

“政界のシンデレラ、春の着回し16コーデ”
“あの内海真依子さんも愛用 通勤バッグも巾着ショルダーで決まり”
“イケメン議員も虜にした、愛されメーク徹底解剖”

まるで、雑誌の読者モデルのような扱いだ。
かといって、決して目立とうとせずに、日々やんわり笑顔で取材をお断りする姿が好感を呼んでいるらしい。
心の中では、思いっきり眉をひそめて、相手を睨みつけているに違いないが。

唯一の心配は加熱する報道によって、彼女の過去が晒されることだったが、今のところ突如現れた“政界のシンデレラ”の美しさとセンスに注目が集まるばかりで、それも心配なさそうだった。
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