初恋も二度目なら
「それでは部長、おつかれさまでした」
「ありがとう」
「あ・・・いえ。仕事ですから」

部長に「ありがとう」と言われると・・・しかも「ニコッ」なんてされると、なんか・・・胸がドキッとしてしまう。

照れるのを隠すようにスタスタと歩き始めた矢先、「早く着替えてこい」という部長の声が私の隣から聞こえたので、思わず立ち止まってしまった。

「部長っ!いつの間に・・・」
「更衣室の前で待ってる」
「え?いえ、そんな・・・」
「待ってる」
「・・・はぃ」

まだ夜の7時台なんだけど、会社(ここ)を一人で出るのは、やっぱり心細いっていうか・・・怖い。
たぶん、部長はそんな私の心理を察して、「更衣室の前で待ってる」と言ってくれたんだと思った私は、急いで更衣室へ行って着替えると(更衣室内も一人でいるのは怖かったし)、部長のところへ駆けて行った。

「お待たせしました!」
「早かったな。行くぞ」

それから外に出るまで、私たちは無言だった。
特に話すことも、話したいことも、お互いなかったからだと思う。
だけど、私は別にその沈黙が嫌じゃなかった。6年前みたいに。
でも、部長と一緒にいる時によくなる胸のドギマギ程度は、6年前より静まったと思う。

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