初恋も二度目なら
「それは・・・・・・。そんなこと、今はもう関係ないですよね。それじゃあ、私はこっちなので」
「小夜(さや)」

今日、これで何度目だろう。
部長に行く手を阻まれて、手を掴まれたのは。

「・・・なんですか」
「おまえはよく、“私なんか”と言ってたことに気づいていたか?」
「えっ」

そう・・・だったの?
全然気づかなかった。

長峰部長は私の顔を見てフッと笑うと、「やっぱ気づいてなかったか」と言った。

「おまえは、俺と離れていた6年の間に自己を確立し、自分の価値を見出すことができるようになった。ゼロというよりマイナスだった自尊心がだいぶ高くなって、ますますイイ女になった。だから俺・・・おまえと一旦別れて良かったんだよな?」

いつも自信に満ちている部長の顔や声は、少し不安気に見えた。

もしあのまま長峰さんとおつき合いを続けて、一緒にアメリカへ行ってたら、私は環境に染めずに長峰さんに頼りきってしまって、彼はますます「こいつは心身ともに重い」と思うようになっていたかもしれない。
その確率は、すごく高かったと思う。だから・・・。

私は顔に笑みを浮かべると、「はい。別れて良かったと思います」と長峰さんに言った。

「よし。なら、これから俺たち・・・」
「だ、ダメです!私はもう、社内の人とはおつき合いしないと言ったでしょう?だから私は今年から婚活を・・・あっ」

し、しまった!つい口が滑って、婚活してることを・・・よりによって、元カレで、今は上司の長峰部長に・・・言ってしまった・・・!

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